技術情報:電源対策の2つの方法

はじめに

オーディオ機器やビジュアル機器の大半は、交流電源から作り出した直流電源で動作しています。つまり、機器の”原動力”となる交流電源の 品質が、再生される音質や画質に大きな影響を与えるわけです。言い換えれば、電源の品質を向上させることで、再生する音場/画質の 臨場感、生々しさ、解像度を大きく改善することが可能です。電源を見直すだけで、再生機器を数ランクほどグレードアップした場合に匹敵する 効果が得られることも少なくありません。それほど、交流電源の「クリーン化」は、とても大きな意味を持つのです。

そのため、オーディオ/ビジュアル機器の再生品質に不満を感じた場合は、機器を買い換える前に、まず『交流電源のクリーン化対策(以降、 電源対策)』を行うことをお薦めします。ここでは、このような電源対策を初めて行う方のために、その基礎とノウハウをご紹介いたします。

電源対策の2つの方法~「交流安定化電源」と「アイソレーション・トランス」

一般的に交流電源をクリーン化する方法は、「交流安定化電源装置」「アイソレーション・トランス」の使用に大別されます。まずは、これらの 方法のメリット/デメリットを解説しましょう。

交流安定化電源装置
交流安定化電源装置
には、「波形生成方式(ジェネレーター方式)【図1(a)】」と「波形歪み修復方式【図1(b)】」があります。いずれの場合も方式が異なるだけで、歪みのないきれいな正弦波を作り出し、常に一定の出力電圧を保持することができます。さらに、電源ノイズを除去する機能も兼ね備えています。
 これらのメリットの一方で、高い消費電力と発熱量が大きなデメリットです。これは、きれいな正弦波交流を作り出すために内蔵されている パワー・アンプが原因であり、昨今の地球温暖化防止の流れと逆行してしまいます。しかも、大電力用の電子回路に搭載されている部品は 高価な物が多く、特に電解コンデンサーなどは数年~十年程度が寿命と言われており、定期的なメンテナンス(と、その費用)が必要となります。

アイソレーション・トランス
1次コイル(入力側)と2次コイル(出力側)が絶縁されたトランスを「アイソレーション・トランス」と言います。
1次コイルに入力された電気エネルギーを、鉄芯(コア)を介して2次コイルで再び電気 エネルギーに戻すという仕組みになっています【※3】。 つまり、1次側と2次側が絶縁(物理的に断絶)されているのです。そのため、感電等の事故を防止できるだけでなく、大元の交流波形に含まれる歪みやハムノイズを遮断し、きれいな交流を再生機器に送ることができます。このような理由から、事故や不具合が許されない医療機器や情報処理装置の電源対策として用いられています。
 このアイソレーション・トランスは、コイルと鉄芯、シールド材といったシンプルな構造で形成されているため、信頼性が高く、長寿命、そして低価格での実現が可能です。交流安定化電源装置のような「波形修復」や「電圧安定化」といった作用はありま せんが、電力損失が桁違いに低くてエコロジーですので、一般家庭でオーディオや映像を楽しむ際に導入する電源対策に最適です。
【※3】
図2に示すように、1次側に入力された「電気エネルギー」は、1次コイルで 一旦「磁気エネルギー」に変換されます。
その磁気エネルギーは鉄芯(コア)を介して2次コイルに高効率で伝送され、 2次コイルで再び「電気エネルギー」に戻され、クリーンな交流電源が出力 されます。

「トランス」と言うと、電圧変換を目的とした「電源トランス」をイメージする方も少なくないでしょう。この電源トランスとアイソレーション・ トランスの違いは何でしょう? アイソレーション・トランスは、1次と2次の巻線間には厳重な静電シールドが施されています。
そのため、高周波ノイズの静電結合(いわゆる”飛び付き”)が徹底的に排除された構造となっています。
これが、ノイズ除去を目的としてアイソレーション・トランスが用いられる大きな理由です。

>アイソレーション・トランスがオーディオ/ビジュアル機器にもたらす効用